新星観測のすすめ -- y フィルターで光度曲線を観測しましょう


回帰新星 へびつかい座RS星(RS Oph) の爆発について

へびつかい座RS星(RS Oph)が21年ぶりに爆発しました(2006年2月12日UT)。

1. yフィルターとは?

Stromgren の uvby の y のことです。(理科年表p.117)
新星のスペクトルでは、ネビュラー・フェイズといわれる晩期になると 酸素の禁制線(下の図では 5000Åのところに[O III]として示されている) などの線スペクトルが非常に強く出ます。広帯域の V バンドでは、その寄与が 大きくなり、連続光成分の正確な光度が出ません。それらの部分を避けて、 連続光成分のみを測定できるように設計されたフィルターが y-filter です。 下の透過率の図で、赤い線で示されたのが y band で、 UBV の V とピークは近いのですが幅がずっと狭くなっています。 図では、1992年のはくちょう座の新星(V1974 Cyg 1992)の極大から 166日後(ネビュラー・フェイズの比較的早い時期)と450日後 (ネビュラー・フェイズの遅い時期)の二つのスペクトルをを示しました (Barger et al. 1993, ApJ, 419, L85)。

この最後の図を見ると、y フィルターを使っても、ネビュラー・フェイズの 晩期になると輝線の影響が入ってくるようです。連続光成分のみを取り出すのは なかなか難しい。

Custom Scientific 社の y フィルターの特性と値段 (透過曲線は上の図の赤線です)

2. 新星の観測シーズンはいつですか?

2月の明け方、いて座付近の天の川が昇る様になると、例年、新星の発見が 報告されはじめます。捜索が集中することと、太陽との合で見逃されていた 新星が見つかることによるためらしいです。
従って2月から、いて座の天の川が沈んで見えなくなる10月く らいまでが、日本での新星の通常の観測シーズンです。

3. 観測例

なるべく発見直後から、なるべく長期にわたって観測してみて下さい。 下の図は1987年のはくちょう座の新星の光度曲線ですが、黒点が v 等級、 赤点が y 等級です。はじめのうちは y 等級は v 等級とほとんど同じですが、 次第にずれてきて1等以上違ってきます。(この図よりもっと長く 観測して、y等級の線がくきっと折れ曲がるところまでデータを取って 下さい。理論と合わせる上でたいへん役に立ちます。)

4. 何がわかるか

蜂巣・加藤の新星風理論から計算した光度曲線のうち、観測データに もっとも良く合う曲線を選べば、白色矮星の質量がだいたいわかります。 さらに元素組成の情報があれば(ガス中に CO が多いか Neが多いか等) もっと精度よく決められます。

下の図は、1978年のはくちょう座の新星の観測データに理論曲線を 合わせたところです。(横軸が対数なので上の図と形がちょっと違います) y 等級の光度曲線は、今度はピンクで示されており、V 等級が赤になって います。赤い点は途中で理論からそれていきますが、ピンクの方は 理論によく合っており、3本の線の中で青い線が最も良く合うことが わかります(青い線は白色矮星の質量が 1.0 太陽質量のもの)。

5. 観測したデータはどうする?

得たデータは VSOLJ または VSNET に投稿してください。 (注意:このページの管理人には送らないで下さい)

(投稿するにはどちらも登録が必要です:VSOLJの登録VSNET登録)

6. 参考文献・解説

そのうち充実させますので、しばらくお待ちください。
比較星の情報(SOFA)
とりあえず論文
  • (nova Cygni 1992)(ApJ 2005, 631, 1094 Hachisu and Kato, Astro-ph 0506246 この例は、X線と紫外線のデータと理論曲線を合わせる ことにより白色矮星の質量や水素の含有量などが決まり、それが 可視光にもばっちり合うということを示す良い例になりました。 y 等級の観測はありませんでしたが、y があれば、もっと長期間理論と合うはずです )

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