古典新星 いて座 V5583 星 (V5583 Sgr) の超軟X線期の予測

蜂巣 泉 (東京大学総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系:教養学部宇宙地球科学教室)
加藤 万里子 (慶大)


1. はじめに-- V5583 Sgr は V382 Vel とソックリ

2009年8月6日(世界時)に西山さんと椛島(かばしま)さんによって、 いて座に発見された古典新星は、いて座V5583星(V5583 Sgr)と名づけられました。 前原さんや清田さんなど VSOLJ のメンバーの方や、AAVSO の測光観測を つらつら見ていたら、1999年に爆発した V382 Vel とソックリであることに 気づきました。(2009年12月20日頃。) なぜかと言えば、少し前に書いた論文で、V382 Vel の 超軟X線観測について取り上げていたからです。

V382 Vel は爆発半年後にBeppoSAX衛星によって超軟X線源として検出され ました。古典新星の超軟X線期を観測すると、白色矮星の質量など、古典新星の いろいろな物理量を推定することが可能になり、古典新星を研究する上で非常に 役にたちます。

そこで、前原さんと清田さんと共著で、 超軟X線期を予報する短い論文を書きました。これは、その日本語の 短い解説です。論文は12月27日に ApJL に投稿(submitted)しました。 論文は arXiv:0912.5056 にて見ることができます。

V5583 Sgr 2009#3 と V382 Vel 1999 の B, V, Rc, Ic の測光観測: 二つの新星がソックリであることに驚きます。

下の図の拡大図


図1. V5583 Sgr 2009#3 の光度曲線。

2. 超軟X線期の予報

超軟X線期間のはじまりは、新星風がやむ時間 t(wind) とほぼ同じと 考えられます。同じように、超軟X線期間のおわる時間は、水素殻燃焼の やむ時間 t(H-burning) とほぼ同じです。このあたりの解説は、 前の解説記事を見てください。 V5583 Sgr が V382 Vel と同じような光度曲線を持つなら、その超軟X線期も 同じようになるはずです。私たちの理論的な光度曲線とフィットすると、 下の図2のように、超軟X線のオンとオフが求まります。 オンは爆発後 120 日ほどですので、もう12月のはじめ頃には、超軟X線期 に入っていたかもしれません。220日後にオフになるのであれば、 2010年の3月中頃です。まだ、十分間に合うと思うので、X線衛星を向けて 見て欲しいと思います。

というわけで、去年の暮れに、古典新星のX線観測をしている Ness にメイルをしましたら、今は V5583 Sgr 2009#3 が太陽の近くに あるので、2月中旬ころまではSwiftのX線望遠鏡を向けられないという返事でした。 「えー、そんなー」ことがと思いましたが、抜けてますねー。もうちょっと、待ち ましょう。(2010年1月6日追記)

下の図の拡大図


図2. 超軟X線のオン t(X-on)=t(wind) 時間とオフ t(X-off)=t(H-burning) 時間をモデルフィッテイングから決める。

3. 論文はこちら

paper (pdf)

4. その他いろいろ

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古典新星の2次極大(secondary maximum)のメカニズムの解明:
わし座 V1493 星 (V1493 Aql 1999 No.1)、 はくちょう座 V2362 星 (V2362 Cyg 2006)、 はくちょう座 V2491 星 (V2491 Cyg 2008 No.2)
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