U Sco は白色矮星の質量がチャンドラセカール限界質量(約1.4倍太陽質量)に
近く、現在もその質量が増えているらしいことから、将来、チャンドラセカール
限界質量に到達したときに、中心の炭素の核融合反応に火がつき、一気に燃え
あがるために、Ia型超新星爆発を起こすと思われています。
図1。 U Sco の 超軟X線期の想像図。
U Sco は軌道周期が1.23日の近接連星系です。
古典新星より、やや周期が長いので、伴星は主系列星ですが、少し進化して
半径が少しだけ(2倍程度?)ふくれた状態だと考えられます。伴星はロッシュローブを
満たしているので、白色矮星のほうへガスが落ち込み、降着円盤を形成しています。
ふだんはとても暗い
のですが、爆発すると、白色矮星の表面につもったガスが大きくふくれて、明るく
輝きます。その時は伴星はガスの中に埋もれています。ガスは質量放出で高速で
とびだしていくので、広がってうすくなります。それで光球の場所がしだいに
内側に移動してきます。そのうち伴星が見えてきて、降着円盤が見え、光球が
小さくなって、白色矮星の半径にちかづいてきた時期の様子がこの図です。
白色矮星の表面の光球温度が高くなると紫外線や軟X線がでるようになり、
それに照らされて、降着円盤の表面や伴星の表面が温まって、可視光を出します。
伴星に降着円盤の影ができていることに注目。
2010年1月28.4385日(世界時)に B. G. Harris (New Smyrna Beach, FL, USA) によって、11年ぶりに爆発(V=8.05等)していることが発見されました。
以下は、 U Sco を観測する方に、理論的な立場から、参考になりそうな ことをまとめます。
前回の爆発(1999年2月)の測光観測と私たちの理論光度曲線:
下の図の拡大図 出典は ApJ (2000)528,L97. Hachisu,Kato,Kato,Matsumoto
図2。 U Sco の 1999年爆発時のの光度曲線。青い点は京都大学の大宇陀
観測所のデータ。ピンクはそれ以外の観測データ。ともに、V等級。図の矢印で、
Sとあるのは secondary eclipse (第二極小)の時の観測、Pはprimary eclipse
(第一極小)で観測されたときのもの。
理論曲線の方は、赤い破線が、爆発した白色矮星が出す光の光度。青い点線は、
白色矮星にに照らされた円盤が光る光度。伴星も照らされていて光っているので、
それも考慮して、連星系全体からくる光度 (つまり白色矮星+円盤+伴星)を計算すると
、黒い実線になる。U Sco は連星周期 1.23 日で回転しており、図1のように軌道面が
視線方向に近いので、1.23日おきに、白色矮星が伴星に隠される。それで光度も
1.23日ごとに減少している(連星系の回転による3次元の効果をちゃんと計算しました。
すごいでしょ)。
X線衛星 BeppoSAX が1度だけ U Sco を観測し、超軟X線を検出した(19-20日後)。
短い水平線で観測時期を示してある。オリオによれば、このデータはフラックスが少
なすぎるので、マージナル・デテクションだそうだ。今回は swift が生きているうちに
爆発してくれて本当によかった。軟X線がいつ検出されるかお楽しみ。
(私どもの予想では、新星風が
やむ時、つまり図中の wind phase が終るころです)
注意:このモデルでは光学的に薄いプラズマからのfree-free emission (自由-自由遷移放射光)の成分が入っていないので、爆発後1週間から 10日ころでは、第一極小がより深く出ています。実際は、もっと、埋まって、 浅くなっているはずです。
前回爆発時に書いた論文では、 U Sco の質量は、図2にあるように、1.37太陽質量と、 非常に重いです。RS Oph は1.35 太陽質量くらいだと考えられるので、それより重い わけです。これはIa 型超新星爆発をする白色矮星の質量に非常に近く、Ia型超新星の 親天体の第一候補です。願わくば、U Sco の新星爆発がちゃんと終り、超軟X線も しっかり検出されて(モデル計算ができるし、論文も書ける)、その後に 連続してIa 型超新星爆発を起こしてくれると、非常に嬉しいです。
爆発後7日後あたりから、フリッカーリングと呼ばれる、0.2等程度の 短時間(数十分)変動が受かりはじめました。伴星から白色矮星への 質量降着が復活(?)してきたようです。降着円盤が見え出したということは、 連星の食が見えてもおかしくない、ということです。(2月6日記)
U Sco の食の観測キャンペーン! [vsolj 9907] campaign of U Sco eclipse observation このメイルの中には食(主極小)の予報があります。が、私としては、 主極小だけでなく、主極小と主極小のまん中にある、副極小も ねらい目だと思います。
U Sco の星図(by Schaefer)
爆発後4-5日後あたりから、Swift衛星がU Sco からの硬X線(3 keV 以上)を 検出したと報告 (ATel No.2419) がありました。硬X線なので、爆発したガスが 衝撃波を形成し、高温になったプラズマから放射されたX線と考えられます。 私たちの硬X線の起源に関する説は、白色矮星からの高速なウインド(風)が 伴星にぶつかった時の 衝撃波から出てくるのではないか、というものです。4-5日後には、 伴星が見え出しますので、4-5日後から検出され出したという時間的な関係は 良くあっています。(2月6日記)
爆発後12日後に、Swift衛星が U Sco からの超軟X線(28+/-8 eV)を 検出したと報告 (ATel No.2430) がありました。今後、何日程度続くのか、楽しみです。 (2月12日記)
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