宇宙関係の「本」の紹介


2000年4月11日 --- 伊藤直紀 著 「宇宙の時、人間の時」 朝日選書 643

 現在の宇宙像が分かりやすく書かれていると同時に、 天文学者、宇宙物理学者がその理解にどのようにして到達したかの プロセスも、著者の人柄の反映か、ていねいに解説されている。 内容は、宇宙膨張の発見からはじまり、絶対温度3度(3K)の宇宙背景放射、 初期宇宙での元素合成、宇宙の重力の大部分を担うダークマター、 恒星の進化、その最後を飾る超新星爆発、そこから生まれる中性子星という 構成になっている。最近の正統的な宇宙観をざっと見渡すには、好著だと思う。 伊藤直紀氏は、中性子星や白色矮星などの高密度物質の物性物理 (高密度物質の核反応や冷却)で世界的な業績をあげて来た。私からみると、 天文学者というより、「物理学者」である。 悪い意味ではないのだが、ところどころに「物理帝国主義」の雰囲気が 見受けられるのは、伊藤直紀氏が林忠四郎門下の生粋の物理学者である結縁か。 著者は、宇宙論が直接の専門ではないが、いろいろな論文を 直接当たられて、この本を書かれた。また、この本に出て来る、 天文学者や物理学者の何人かに直接会われて、話もしている。 それらが反映してか、この本の真攀な雰囲気を醸し出している。

 この本のはじめの方に、宇宙膨張を系外銀河の後退速度から提案した、 アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルのことが書かれている。私は、 この本ではじめて、彼が英国のオックスフォード大学で法律を学び、帰国して 弁護士になったが、天文への興味やみがたく、ついに天文学へ転向した、 という話を知った。これは、講義の時にエピソードとして使えそうである。


( go to Hachisu's Home Page )
Last updated: